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あとーすログ

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本谷有希子『生きてるだけで、愛』を読んだ

小説

第154回芥川賞が発表になりましたね。前回に引き続いて二作受賞で、滝口悠生「死んでいない者」と本谷有希子異類婚姻譚」でした。

僕もそんなに芥川賞に毎回注目しているというわけでもないのですが、又吉直樹「火花」が話題になった前回と比べて、ぜっっっっんぜん話題になっていませんね。本谷有希子が劇団を主催していたり声優経験者だったり36歳美人ママであることを見出しに書いてWebニュースも人の目を引こうとしているのが虚しい。

 

さて、芥川賞を受賞した本谷有希子の小説を今回は買って読んだわけです。これは彼女が芥川賞を受賞したからというミーハーな理由もあります。しかし、実はもう一つ理由があり…。

僕はたまにTSUTAYAで映画のDVDを借りて見るのですが、過去にいくつか二回借りて見た映画があります。その中の一つが、本谷有希子原作の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」。大好きなチャットモンチーが主題歌を歌っているというのも大変良かったし、とにかく内容が良かった。

で、色々調べてみるとサブカルの人たちがめっちゃ本谷有希子好きみたいだな~ということに気づいて。いつかは読みたいと思っていたんです。本当です。そしたら芥川賞受賞してしまって、読むなら今しかないな、と。

 

結論から言うと、めちゃくちゃ面白かったです。小説って一人称小説であっても、メタ的な視点を持っていることが多いのですが、この小説では物語る主体と主人公がほとんとぴったり一致しています。だから、主人公の感情が高ぶれば、それがそのまま文章に出てしまうのです。「読点使いすぎでは…?」と心配になったり。

なんで、自分が、こんなに、馬鹿みたいに、寝るのか、誰か、納得いく、説明を、しろ。スニーカーをはいてきてしまったせいで、冷たい水の足先のほうから染みこみ始めている。あれだけ、寝て、まだ、眠いって、あと、どれだけ、人生を、無駄に、することに、なるんだ。

本谷有希子『生きてるだけで、愛』)

 あと、比喩の仕方がとても面白くて、小説を読みながら声出して笑ったのって久しぶりだなあと思います。具体的にどこで声出して笑ったのか引用して示したいのですが、ちゃんとメモしてなくてどこだったか忘れてしまいました。すみません。まあどの表現が面白いかは人によって違うと思うので、買って読んで探してみてください。

 

とにかくずっと主人公はギリギリなんですけど、元ヤンの夫婦が経営しているレストランでバイトをすることになって一旦緩んじゃうんですよね。主人公も、小説自体も。ああこんな感じで終わっちゃうのかなあと思っていたら、最後にしっかりネジを締めてくる感じがとてもいい。

併録されている「あの明け方の」も「生きてるだけで、愛」のエッセンスを詰め込んでいる感じがして(もしかしたら、そこに詰め込まれているのが本谷有希子らしさなのかもしれません)、非常に楽しく読めました。

 

異類婚姻譚』はこれまでの小説とは違うという話を聞いているので、他の作品をまず読んでから、ゆっくりと読んでみようかなあと思います。文庫版が出るまで待ってもいいかも…。

 

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)