僕は仕事ができない

熊本でWebディレクターをしています。文芸、演劇、カメラ、インターネットが好きです。

【観劇記録】あべゆう×ピッピ「ぽじ」"関係を結ぶこと"と"リアルの手触り"について

ちょっと前の話になるんだけど、花習舎にて、あべゆう×ピッピ「ぽじ」を観た。作・演出は不思議少年の大迫さん。

 

以前から、大迫さんの私小説的なのにがっちりとした構成のある作品や演出が好きだったのだけど、実は前回に作品を観たのが数年前だったりするので、今回は久し振りに大迫さん演出の作品を見れてとても良かった。以下、内容にも触れつつ感想を。


僕はこの「ぽじ」という作品を見て、関係を結ぶことについて考えていた。一人の男をめぐって、そこに奥さんと不倫相手がいる。この女二人は、本来であれば関係を結びたくないものだろう。男と妻、あるいは男と不倫相手との関係は、愛を求めてその二人の間だけで結ばれる関係だ。ところが、妻と不倫相手という関係は、直接的に繋がりがあるわけではない。そこには、必ず男という媒介を必要とする。また、そこには憎しみが渦巻いていて、負の感情によって関係性を構築する必要がある。これには、多大なエネルギーが必要となる。

 

できれば、自分は関わることなく、もう一人の女との関係性が途切れてほしいとそれぞれの女は思うだろう。しかし、なかなか思うように事は進まない。それならば、やはり二人の女が直接関係を結ぶしかないのだ。

 

はじめに妻が不倫相手に水をかけて、その後に自然に話しかけようとするシーン。あれは、そんな関係性の二人をどうリアルに描くかの挑戦であったと思う。そこには憎しみや恐怖といった感情があるけれど、しかし、初対面の相手を憎むのはなかなか難しくて、様々な感情がないまぜになるはずだ。そのように感情がぶつかりあったとき、どういった反応がもたらされるのか。そこに激情がうまれるのは一つの答えだと思うけれど、「ぽじ」では、もっと静かな形のリアルが展開される。

 

芝居の中にどこまでリアルを持ち込むのか、あるいはどのようなリアルを実現するのかは演出家の特徴が色濃く出るところだと思うのですが、僕は大迫さんからもたらされるリアルの手触りが好きんだなあと改めて思った。

 

一緒に観た何人かの人はこれを観て辛い気持ちになったと言うし、出演していたあべさんやピッピさんも同じようなことおを言っていたんだけど、僕はあまり辛くならなかった。あまり自分毎として観なかったのが大きいと思う。ただただ、奇妙な関係性を結ぶ二人の女性のリアルがどう展開していくのか、というところに興味があった。

 

この二人の女は、お互いが愛する男さえいなければ、別に負の感情で関係を結ぶ必要はない。だからこそ、この二人が仲良く喋るシーンも成立しうるし、実際そういうシーンが登場した。

 

感情は常に単一ではなく、入り混じり、反転して、それぞれの感情がそれぞれの感情を高め合ったり殺しあったりしてどんどん移り変わっていくものなのだなあいう感動を得た。そういう演劇体験だったと思う。

 

何だか変な書き方になってしまったんだけど、僕が言いたいのは「ぽじ」がめっちゃ面白かったということだけです。これまでに色んなところで上演されていて、再演されるような雰囲気でもあったので、皆さまのお近くで上演される際はぜひ行ってみてください。