1年半で100個作って感じた140字小説の可能性
こんにちは、あとーすです。
僕は140字小説を書くのが好きです。いつ頃から書き始めたのかなあと思って一番始めの作品を探してみると、どうやら2014年8月31日の作品が最初の投稿みたいです。
1993年式の思考回路と小さな正義感で漸進する僕の身体。小さな生命を破壊するために振り上げられたその腕。悪趣味なセンチメンタルと殺戮は、何も守らない。終末を与える権利を僕は持ち、しかし、だからといってそれを行使しなくても良かった。ぷんと小さな音を立てて、そいつは耳元を通り過ぎた。
— 無間書房 (@mugenshobo) 2014, 8月 31
この文章は何を言っているんだ思われるかもしれませんが、僕としては蚊を叩き潰すところを思い出しながら書いたつもりです。
最近で人気があったのはこれですね。
階段を一気に駆け上がる娘が、いつか手すり無しでは一歩も進めないくらいに老いてしまう。それを見る前に、きっと僕は死ぬ。そういう風にできている。幸せだ。「私に似たのよ」と笑いながら、君は娘を追いかけて走る。僕は手すりを使って怠ける。早く老いて、君の老いさえ知らないまま死にたいと思う。
— 無間書房 (@mugenshobo) 2015, 12月 1
試行錯誤を重ねながら、1年半で100作品ほど作ってきました。
そこで、これまでやってきたとか、ここまで140字小説を書いて思ったこととか、これからやっていきたいことなどをまとめておこうかなと思います。
これまでやってきたこと
基本的には、僕が代表を務める文芸同人「無間書房」のTwitterアカウントに作品を投稿してきました。
最近は、習作を「篠原歩」というTwitterアカウントにあげることも多いです。ちなみに「篠原歩」は僕の筆名です。
どちらのフォロワーさんも徐々に増えており、ありがたいことだと思っています。
また、「140字小説を自分のアカウントで流すことに抵抗がある人も多いのでは?」と思い、140字小説botというものを運用しています。
こちらは、運用からだいたい1年くらいが経ち、投稿作品も200を超えています。匿名で投稿されるので、ネームバリュー抜きに作品単体でどれだけ評価されるのかを試すのにも良さそうですね。
また、140字小説botが意外と人気になってきたので、140字小説大賞というものを開催いたしました。
こちらも200作品を超える応募があり、優秀賞・最優秀賞あわせて4作品を選ぶのに本当に苦労しました。レベルの高い作品が多く、僕も大変勉強になりました。
140字小説botや140字小説大賞をやっていると、「140字小説」って色々なタイプのものがあるんだなと気づきます。それは、「小説」の定義が曖昧なことと似ているでしょう。その過程で140字小説の新たな可能性に気づくことができるし、僕も自分のスタイルに修正を加えています。
昔はディスカバーがTwitter小説大賞というものをやっていたみたいなのですが、第3回で終わってしまっています。ぜひ復活してほしいなと思っております。
あと、これは最近の活動なのですが、熊本の植木にある「ハナウタカジツ」さんというところの140字小説コンテストのお手伝いをしました。
ここまでやってきて思ったこと
140字小説は文芸作品と呼べるのだろうか、と僕は最近よく考えます。小説や随筆なんかは散文芸術として認められているし、詩や俳句、川柳、短歌という分野も文芸にはあります。そこで、140字小説というのは非常に中途半端な存在であるような気がしています。
小説を書くには、140字というのはあまりにも短すぎる。そこに巨大な構造を埋め込むことはとても難しいでしょう。また、俳句や短歌などと比べたときに、140字は冗長すぎるような気がしてしまいます。まさに帯に短し襷に長しというやつですね。
それではどうして僕が140字小説にこだわるのかというと、Twitterの字数制限が140字だからということになるでしょう。実は僕は、140字小説を純粋に作品としてだけ見ているわけではありません。実は、宣伝ツールとして非常に優秀だから140字小説を書いているという面もあるのです。詳しくは、こちらの記事にも書いています。
イラストや漫画を描いている同人の方々は、素敵なイラストなんかをTwitterにあげればそれが拡散されてファンが増えるということもありえます。でも、たとえば文芸同人が長い小説を書いてそのリンクを載せたところで、たくさん拡散されるということはほとんどないんですよね。そして、その文章はほとんどの人に読まれないままに終わってしまう。
でも、140字小説ならば他のページに飛ぶことなくTwitter上だけで読んでふぁぼったりRTしたりとアクションを起こすことができる。そして、自分の書いた文章を多くの人に届けることができる。それがきっかけで、長い小説も読んでもらえると良いなと思うのです。
もちろん、140字小説を1年半も書いていると、140字小説特有の良さにも気付きます。好きな小説でも繰り返し読むのってちょっとしんどいし、俳句や短歌などでは物足りないこともある。でも、140字小説って程よくボリュームもあるし、繰り返し読んでもしんどくないような気がしているんですよね。これは、僕がいつもTwitterを見ているからそう感じるのかもしれませんが。
まあとにかく、作品としてのおもしろさもありながら、140字小説を宣伝・広告方面に使うのは実に有効なんじゃないかなと思っています。先ほども書いたように、自分の文章の特徴を知ってもらうために活用するのもありです。
また、上の方でハナウタカジツさんの140字小説コンテストのお手伝いをさせていただいたことを書きましたが、そういう事例がもっと増えていってくれると嬉しいなと思います。手伝ってくれないかとお話をいただいたとき、本当に嬉しかったです。
これからやっていきたいこと
まず、個人的な活動として紙で140字小説集を出したいなと思っています。すでにほしおさなえ先生などが140字小説活版カードというものを文フリなどで販売されていて、羨ましく思っております。
ただ、140字小説を掲載しているだけではTwitterで読めば良いので、プラスアルファの価値を何かつけることができれば良いなと企画しているところです。
140字小説全体を盛り上げていこうというのも野望のひとつです。140字小説大賞も今回は僕一人で審査をしましたが、もっと140字小説が上手な人を集めて、クオリティの高い140字小説や書き手をしっかりと発見したいなと思っています。本当は、ディスカバーさんみたいにしっかりと賞金を出せるところがやるのが一番いいのですが……。
また、ハナウタカジツさんみたいに、コラボで140字小説コンテストを出すのも良いなと思っています。これは140字小説が発展することも嬉しいのですが、140字小説が何かの魅力を伝えるツールとして使われるというのも、非常に嬉しいなと思います。
まとめ
だらだらと書いてしまいましたが、僕が今考えていることはだいたいこんな感じです。
皆さんも、ぜひ140字小説を書いてみてください! 創作人口が増えることが活性化につながりますので!!

- 作者: 内藤みか,安達瑶,新城カズマ,小林正親,渡辺やよい,吉井春樹,泉忠司,黒崎薫,枡野浩一,円城塔,(収録順)
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2009/11/05
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 165回
- この商品を含むブログ (22件) を見る